警察官採用試験には様々な試験がありますが、その中の一つに集団討論があります。

グループディスカッション(GD)と呼ばれたりもしますね。

令和3年度は、全47警察本部のうち11の県警で集団討論を実施しています。

今回はその11県警のうち、過去問を公表している9の県警で実際に出題された課題を掲載。

目次

  1. 警察官の集団討論の特徴
  2. 山形県警
  3. 福島県警
  4. 茨城県警
  5. 長野県警
  6. 富山県警
  7. 岐阜県警
  8. 静岡県警
  9. 滋賀県警
  10. 高知県警
  11. 熊本県警
  12. 大分県警
  13. まとめ

1.警察官の集団討論の特徴

今回、紹介するのは、富山県警と滋賀県警を除く、9県警の令和2年度の課題です(長野県警のみ令和元年度の課題)。

警察官採用試験の集団討論は、1グループ6人前後で、時間は30分程度が平均的です。

実施する県警によっては10人を超えたり、60分に達することもあるようです。

他の試験と比べ配点は低い

集団討論は筆記試験と違い、受験生と会話したり試験官に見られたりするので、苦手意識を持つ受験生は多いです。

ですがそこまで苦手意識を持つ必要はありません。

なぜならほとんどの県警では、集団討論の配点は個人面接などに比べ高くないからです。

たとえば山形県警の採用試験は全部で800点満点ですが、集団討論の配点は100点です。

⇒ 山形県警の受験案内 (3ページ目に点数の配分が載っています)

一方で、最もウェイトが高い個別面接の配点は、300点になります。

なので、あまり気張らず「討論の配点は低いし、最悪失敗しても大丈夫だ」くらいの気持ちで、心に余裕を持って試験に挑みましょう。

もちろん、配点が低いと言っても、しっかり対策は必要です。

課題は2つタイプに分けられる

警察官採用試験の集団討論で出題される課題は、次の2つのタイプに分けられます。

  • 警察の仕事に関わる課題
  • 一般的な課題

警察の仕事に関わる課題

警察官の業務に絡めた課題や、警察官としてどう考えるかなど、警察官試験ならではの課題。

たとえば、「交通事故死者数を減らす対策について」などです。

福島県警、岐阜県警、静岡県警の3県警はこちらのタイプの割合が多いです。

一般的な課題

特に警察官に限った話題ではなく、世間一般的な事柄に関する課題です。

警察官以外の公務員試験でも出題されそうな内容。

たとえば、「人口減少を抑えるには」などの課題です。

長野県警、山形県警、茨城県警、大分県警の4県警はこちらの一般的なタイプが多いです。

次に、山形県警から順に過去の課題を掲載します。

警察官Aと警察官Bの課題を分けてまとめています。

ちなみに警察官Aが大卒程度、警察官Bがそれ以外(高卒程度)の試験区分。

2.山形県警

二次試験で実施されます。

警察官A

3題掲載

  • 身体機能の低下等から高齢者の運転による重大事故が後を絶たない一方、高齢者を中心に運転免許証の自主返納者数が増加傾向にある。
    ついては、次の点について討論し、グループとしての意見をまとめなさい。
    1. 運転免許証の自主返納のメリットとデメリット
    2. 上記1.のデメリットへの対応策
  • 県内外において、店舗や施設の従業員が新型コロナウイルスに感染した事例が発生している。
    ついては、次の点について討論し、グループとしての意見をまとめなさい。
    1. 新型コロナウイルスに感染した従業員がいる店舗等の情報提供のメリットとデメリット
    2. 上記1.のデメリットへの対応策
  • 近年、大学などの教育機関において、インターネットに接続されたパソコンを用いて遠隔で授業を行う「オンライン授業」が広まっている。
    ついては、次の点について討論し、グループとしての意見をまとめなさい。
    1. 「オンライン授業」の課題
    2. 上記1.の課題に対する対応策

警察官B

実施なし。

3.福島県警

二次試験で実施されます。

警察官A

3題掲載

  • 新型コロナウイルス感染症拡大に伴う経済活動の停滞、雇用状況の悪化等により発生が予想される犯罪について挙げ、その予防のために警察としてできることについて、グループとしての意見をまとめなさい。
  • 近年、あおり運転や飲酒運転等の悪質な交通違反を原因とした悲惨な事故が多発している。
    このような事故を 1件でも減らし、運転者に交通ルールやモラルを意識させるためには、どのような対策が有効かグループとしての意見をまとめなさい。
  • 特殊詐欺被害を防止するためにはどうすればよいか、グループとしての意見をまとめなさい。

警察官B

4題掲載

  • 近年、SNS やオンラインゲーム利用者の低年齢化から、小中学生が様々な事件に巻き込まれるケースが増えている。
    このような事件等を防ぐためには、警察としてどのような防犯指導をすればよいか、グループとしての意見をまとめなさい。
  • 小中学校、高校等で認知されたいじめの件数は増加し、いじめにより児童、生徒等の安全が脅かされたり、不登校となるなど被害が深刻化するケースも増えている。
    学校でのいじめをなくすためにはどうすればよいか、グループとしての意見をまとめなさい。
  • 福島県では、年間の交通事故死者数を 60人以下とすることを目標としている。
    交通死亡事故を1件でも減らすための対策について、グループとしての意見をまとめなさい。
  • 世界的に人種差別が大きな社会問題となっており、日本にも数多くの外国人が居住しているところであるが、異なる文化圏の人と接する際にどのようなことに注意すれば、互いに理解し合い、トラブルを回避することができるか、グループとしての意見をまとめなさい。

4.茨城県警

二次試験で実施されます。

警察官A

2題掲載

  • 職場のコミュニケーションとしての飲み会への参加の是非について
  • 新型コロナウイルス感染症の影響による大学のオンライン授業化の是非について

警察官B

2題掲載

  • 対面や電話等でのコミュニケーションについて
  • 警察官の志願者を増やすための警察ドラマの作成について

5.長野県警

二次試験で実施されます。

警察官A

2題掲載

  • 中学校の部活動を「週休2日」とすることについて、あなたは賛成(○)か反対(×)か。
  • 「働き方改革」により、法律で残業時間に上限を設けることについて、あなたは賛成(○)か反対(×)か。

警察官B

実施なし。

6.富山県警

警察官A

過去問掲載なし。

警察官B

実施なし。

7.岐阜県警

二次試験で実施されます。

警察官A

6題掲載

  • 登下校時における子どもの安全を守るための警察の活動について
  • 薬物事犯の対策について
  • あおり運転(妨害運転)抑止対策について
  • 高齢者を犯罪・事故から守るための警察の活動について
  • 集中豪雨に伴う災害対策について
  • 犯罪被害者支援について

警察官B

実施なし。

8.静岡県警

二次試験で実施されます。

警察官A

1題掲載

  • 令和元年度の薬物事犯全体の検挙人員は昨年と比較して横ばいでしたが、大麻事犯の検挙人員は過去最多となりました。
    警察庁が大麻取締法違反で検挙された者631人分のデータについて調査をおこなったところ、大麻を初めて使用した年齢は「20歳未満」が307人と最も多く、また、大麻を初めて使用した経緯・動機については「誘われて」という理由が487人と最多でした。
    若年層では友人等から誘われるなど、周囲の環境に流され大麻に手を出す傾向がうかがわれますが、警察として薬物事犯を減少させるためにどのような対策をおこなっていくべきか自由に討論してください。

警察官B

1題掲載

  • あなたが警察学校に入校したことを想像してください。
    警察学校に入校したとき一番不安に思うことは何ですか?
    また、その理由は何ですか?
    グループ内で「最も不安なこと」を話し合い、その不安を払拭するための解決策を導き出してください。

9.滋賀県警

警察官A

過去問掲載なし。

警察官B

過去問掲載なし。

10.高知県警

二次試験で実施されます。

警察官A

12題掲載

  • 新型コロナウィルスを想定した新しい生活様式について
  • 認知症にかかる行方不明者対策について
  • 自転車利用者のマナー向上について
  • 「働き方改革」と警察業務について
  • 児童虐待が起こる原因と根絶するために必要な対策について
  • あおり運転が発生する原因と防御対策について
  • 職場における若手として年上の上司・先輩とどのように接していくか
  • 高齢者を地域社会から孤立させず、安全で安心して暮らせる社会をつくるための対策について
  • 自然災害への備えについて
  • 男性警察官の育児休業の取得について
  • 友達が犯罪に手を染めていることを知った時の対応について
  • 高齢者に対して運転免許証の自主返納を促す際の留意点と自主返納制度をより一層促進するための効果的な施策について

警察官B

30題掲載

  • 新型コロナウィルスを想定した新しい生活様式について
  • 認知症にかかる行方不明者対策について
  • 横断歩道における歩行者優先対策の推進について
  • 「働き方改革」と警察業務について
  • 児童虐待が起こる原因と根絶するために必要な対策について
  • 自然災害への備えについて
  • 職場における若手として年上の上司・先輩とどのように接していくか
  • 高齢者を地域社会から孤立させず、安全で安心して暮らせる社会をつくるための対策について
  • 自動車運転中の携帯電話使用を減らす方策について
  • 男性警察官の育児休業の取得について
  • 友達が犯罪に手を染めていることを知った時の対応について
  • 量販店における万引き防止対策について
  • ハラスメントの防止対策について
  • いじめを起因とする犯罪と、いじめの相談を受けたり、見聞きしたことに留意すべき点について
  • 自主防災組織の活動について
  • 警察官の職務を踏まえた上でのワークライフバランス(仕事と生活の調和)への取組について
  • 振り込め詐欺を防止するためのキャンペーンについて
  • 児童が登下校中に交通事故に遭わない対策について
  • 女性警察官が働きやすい職場環境づくり
  • 動画や画像をインターネット上に公開する際の注意点について
  • あおり運転が発生する原因と防御対策について
  • シェアハウスにおける必要な役割・分担及び日常生活を行う上での必要なルールについて
  • SNS利用による犯罪やトラブルと、それらに巻き込まれないための利用上の注意点について
  • 交番・駐在所に勤務する警察官の安全対策について
  • 警察への相談・苦情に対する対応のあり方について
  • 街頭防犯カメラの活用とプライバシーの保護について
  • 地域住民への防犯情報の発信の在り方について
  • 警察官に求められる私生活の在り方について
  • 量販店等における万引き防止対策について
  • 高齢者が交通事故に遭わない対策について

11.熊本県警

二次試験で実施されます。

警察官A

6題掲載

  • 日本の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)は減少傾向にあるものの、諸外国と比較すれば、依然として高い水準で推移しています。
    特に、学生、生徒等の未成年者層では、自殺者数、自殺死亡率ともに上昇しています。
    そこで、次の点について討論し、グループとしての意見をまとめてください。
    (自殺統計の特徴)月別自殺死亡率 3月~5月の自殺死亡率が高い。
    自殺の多くは多様かつ複合的な原因及び背景を有しており、様々な要因が連鎖する中で起きている。
    未成年者層の原因・動機別 学校問題、健康問題、家庭問題の順に多い。
    1. 未成年者層で自殺者が増加している要因について
    2. 自殺を防止するための取組について
  • 熊本県の人口は約182万8,000人(平成29年人口動態調査)ですが、年々減少傾向にあり、特に14歳以下の人口は、平成19年から平成29年までの10年間で約25万8,000人から約23万8,000人と、約2万人減少しています。
    そこで、次の点について討論し、グループとしての意見をまとめてください。
    1. 人口減少が熊本県に与える影響について
    2. 人口減少を抑止するための取組について
  • 6歳未満の子を持つ日本人男性の育児時間は、2016年で1日平均48分であり、先進国中最低の水準です。
    また、熊本県における男性の家事時間は、国内でも低い水準にあります。
    男性の週60時間以上の就業は全体的に減少傾向ですが、30代、40代では他の年齢層に比べて高い傾向にあります。
    他方、スウェーデンでは、育児休業制度が日本より充実しており、現在では9割以上の男性が育児休業を取得しています。
    そこで、次の点について討論し、グループとしての意見をまとめてください。
    1. 日本人男性の家事・育児時間が短い原因とその影響
    2. 男性の家庭への関わりを増やすための方策
  • 日本では、本来食べられるのに捨てられる食品(以下「食品ロス」という。)の量が、年間約612万tにのぼり、1人当たり年間48㎏の食品を廃棄していることになります。
    この量は、世界全体で発展途上国の食料不足緩和のために行われる援助量の約2倍に当たります。
    このような現状を踏まえ、次の点について討論し、グループとしての意見をまとめてください。
    1. 食品ロスの要因とこれに起因する問題点
    2. 食品ロスを減らす対策
  • 近年、薬物事犯全体の検挙人員は13,000人台で推移し、横ばい状態が続く中、大麻事犯は増加傾向にあり、特に、人口10万人当たりの年代別検挙人員では、未成年を含む30代以下が全体の8割以上を占めています。
    若年層での増加の一つに、大麻の危険性や有害性への認識の低さが指摘されていますが、このような現状を踏まえ、次の点について討論し、グループとしての意見をまとめてください。
    1. 若年層の検挙者が増えている背景
    2. 薬物乱用防止のために効果が期待される取組
  • 平成30年の健康増進法の一部改正により、本年4月から、原則飲食店や商業施設などには、全面禁煙若しくは未成年者の立ち入りが禁止された喫煙専用室の設置等が義務づけられました。
    これに先駆け、警察本部庁舎内も昨年から全面禁煙としています。
    本改正は、望まない受動喫煙の防止を目的としていますが、次の点について討論し、グループとしての意見をまとめてください。
    1. たばこの有用性と有害性
    2. 受動喫煙防止のために必要な対策

警察官B

実施なし。

12.大分県警

二次試験で実施されます。

警察官A

3題掲載

  • 警察官採用試験の受験者獲得方策について
  • 「テレワーク」について
  • 若者から見た上司の指導について

警察官B

実施なし。

13.まとめ

集団討論を実施する11県警のうち、9県警の過去問を紹介しました。

集団討論で点数を取るには、課題に対する知識があることが前提です。

これらの過去問を参考に、今後出題されそうな課題について予習し、しっかりと討論に参加できるだけの知識を身に付けておきましょう。