志望先の自治体で集団討論(グループディスカッション) が実施される場合、どういった課題が出題されるか気になりますよね。
この記事では参考として、令和2年度の山形県庁・福島県庁・茨城県庁の集団討論で、実際に出題された課題を紹介しています。
また、それぞれの課題に関連した情報も掲載しています。
★目次
- 山形県庁
- 大学卒業程度
- 福島県庁
- 大学卒程度
- 資格免許職・学校栄養職
- 高校卒程度・学校事務職
- 茨城県庁
- 大学卒業程度
- まとめ
- 【関連記事】集団討論のコツについて知りたい方は、こちらの記事で詳しく説明しています。
- ⇒【公務員試験の集団討論を攻略するコツ】流れや取るべき行動を解説!
1.山形県庁

♦大学卒業程度
山形県庁の2次試験は、1回目・2回目と2回に分かれて実施されており、集団討論は2次試験2回目で行われています。
最終合格者は2次試験の合計得点で決定されるため、1次試験の点数は考慮されません。
■配点(行政の場合)
集団討論の配点は、2次試験の合計620点中100点です。
- 1次試験:300点
- 教養試験:150点
- 専門試験:150点
- 2次試験:620点
- 論文試験:100点
- 集団討論:100点
- 個別面接1:100点
- 個別面接2:300点
- 外国語資格加点20点
■課題1
- 今年の7月1日から全国でプラスチック製買物袋(以下「レジ袋」という。)が原則有料となったが、有償無償を問わず、レジ袋の提供を禁止すべきとの意見がある。
ついては、次の点について討論し、グループとしての意見をまとめなさい。- 条例により、レジ袋の提供を禁止することの是非
- 上記1.の結論によって生じる課題への対応策
◎メモ
レジ袋を有料にすることで、たとえばこんなメリット・デメリットがあります。
- メリット
- レジ袋の原料である石油(ポリエチレン)の消費量を減らすことができる
- レジ袋ごみの削減につながる
- 環境・エコに対する意識付けができる
- デメリット
- レジ袋製造を中心に生業としてきた企業にとっては打撃が大きい。
収益減で従業員を解雇する企業も出てきている - マイバッグの普及で、万引きが増えたと感じているお店もある
- レジ袋製造を中心に生業としてきた企業にとっては打撃が大きい。
■課題2
- 昨年5月、世界保健機関(WHO)がゲームのやり過ぎで日常生活が困難になるゲーム依存を疾病として認定したが、18歳未満の子どもの1日あたりのゲームの利用時間を制限すべきとの意見がある。
ついては、次の点について討論し、グループとしての意見をまとめなさい。- 条例により、18歳未満の子どもの1日あたりのゲームの利用時間を制限することの是非
- 上記1.の結論によって生じる課題への対応策
◎メモ
香川県では既に、「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」が2020年の4月1日に施行されました。
ゲームの利用時間が、1日平日60分、休日90分と決められていますが、罰則はありません。
この条例制定後、様々な議論があったためか、他の自治体で香川県に追従する条例は制定されていません。
18歳未満の子どもにゲームの制限を設けると、反動で18歳を超えるとゲーム依存を高めてしまう子どもが現れると、危惧する声もあります。
■課題3
- 現在、県の防災ヘリコプターを使った山岳遭難救助での遭難者の費用負担はなしとなっている。
ついては、次の点について討論し、グループとしての意見をまとめなさい。- 県の防災ヘリコプターを使った山岳遭難救助を有料化することの是非
- 上記1.の結論によって生じる課題への対応策
◎メモ
山岳救助には、多くの人員・コストが必要であり、それには税金が投入されています。
民間救助の場合、捜索1分で1万円、1日で数十万から数百万の費用がかかるとも言われており、県警や消防による救助の場合でも、相当の費用がかかると予測できます。
また、救助活動を行うということは、多少なりとも危険を伴うため人的負担も大きいです。
警察庁「令和3年における山岳遭難の概況」によると、山形県では令和3年に山岳遭難が59件発生しており、これは全国平均56件よりもやや多い件数です。
遭難者は合計65名で、11名が死亡・行方不明となっています。
また、全国の遭難者の48.3%が60歳以上で占めています。
なお埼玉県では、防災ヘリコプターを使用した山岳救助が、平成30年1月1日より有料化されました。
費用は、飛行時間5分で5,000円。
過去の平均救助時間は1時間程度なので、平均6万円ほどかかっています。
■課題4
- 現在、自動車の運転免許の取得年齢に上限はないが、上限を設定すべきとの意見がある。
ついては、次の点について討論し、グループとしての意見をまとめなさい。- 自動車の運転免許の取得年齢に上限を設定することの是非
- 上記1.の結論によって生じる課題への対応策
◎メモ
内閣府の「高齢運転者の交通事故の状況」によると、75歳以上の免許保有者数は10年前に比べ約260万人増加していますが、75歳以上の高齢運転者による死亡事故件数は実は横ばいです。

高齢運転者による事故件数は増えていないものの、他の世代の交通事故件数が減少していることや、テレビによる報道から、増加しているイメージが強く持たれています。
取得年齢に上限を設ける場合は、高齢者の生活が不便にならないように、代替交通の整備や、宅配サービス充実など、行政による支援も必要になってきます。
■課題5
- 歴史的建造物の復元に関して、史実に忠実な復元を行うべきとの意見がある一方、エレベーターを設置するなどのバリアフリー化をすべきとの意見もある。
ついては、次の点について討論し、グループとしての意見をまとめなさい。- 歴史的建造物の復元に関して、史実と異なるかたちでバリアフリー化することの是非
- 上記1.の結論によって生じる課題への対応策
◎メモ
難しい議論内容ですね。
この議論で最も取り上げられるのはお城です。
お城でも、築城当時から変わらないものと、コンクリートなどにより再建されているお城があります。
ただ築城当時そのまま、再建などされていないお城でエレベーターを設置している所はおそらくありません。
その他のお城でも、エレベーターが設置されているのは、大阪城など少数です。
ちなみに2019年に開かれたG20大阪サミットで、安倍前首相はあいさつの際、「大阪城にエレベーターを設置したことはミス」と発言し、各方面から批判を浴びました。
最近では、熊本地震で被災した熊本城は今まで階段のみでしたが、復旧に伴い新たにエレベーターが設置されています。
一方、復元工事を行っている名古屋城については、エレベーター設置の議論が続いていますが、設置しない可能性が高まっています。
■課題6
- 昨年9月、厚生労働省は全国424の病院について再編・統合の検討が必要とし、424の病院名を公表している。
ついては、次の点について討論し、グループとしての意見をまとめなさい。- 病院を再編・統合することの是非
- 上記1.の結果によって生じる課題への対応策
◎メモ
その後、令和2年1月に、厚生労働省から出された通知がこちら「公立・公的医療機関等の具体的対応方針の再検証等について」
つまり公立・公的医療機関は、民間の医療機関では担うことができない部分に重点化し、診療実績が少なかったり、近隣に複数の医療機関があり競合している場合などは、再編・統合を行いましょうということです。
再編・統合することにより、医療の質は向上するという考えがあります。
山形県の対象医療機関は以下のとおりです。
- 天童市民
- 朝日町立
- 山形県立河北
- 寒河江市立
- 町立真室川
- 公立高畠
- 酒田市立八幡
■課題7
- 昨年11月、文部科学省は大学入学共通テストにおける英語の民間資格・検定試験(以下「民間試験」という。)の今年度からの導入を見送り、1年かけて検討することを発表している
。ついては、次の点について討論し、グループとしての意見をまとめなさい。- 大学入学共通テストにおいて英語の民間試験を導入することの是非
- 上記1.の結果によって生じる課題への対応策
◎メモ
2021年6月、文部科学省は「大学入試のあり方に関する検討会議」によって、民間資格・検定試験の導入は困難であると結論付けました。
英語力の向上は期待できそうでしたが、やはり実現するには様々な障壁があったようです。
■課題8
- 小学校においては、「学級担任制」が一般的であるが、昨年12月、中央教育審議会は「教科担任制」を小学5年生・6年生に本格的に導入すべきとする方針をとりまとめている。
その一方、「教科担任制」を小学1年生から導入すべきとの意見がある。
ついては、次の点について討論し、グループとしての意見をまとめなさい。
※「学級担任制」とは、一人の学級担任教師がその学級の全てか大部分を教える方式。
「教科担任制」とは、一人の教師が専門教科を受け持ち、複数の学級で教える方式。- 小学1年生から「教科担任制」を導入することの是非
- 上記1.の結果によって生じる課題への対応策
◎メモ
早い段階で教科担任制を導入するメリット・デメリットは、例えば以下のことが考えられます。
- 1年生から教科担任制とするメリット
- 早くから教科ごとに質の高い授業を行える
- 早い段階から、いろんな先生(大人)と交流する機会ができる
- もしも児童が学級担任のことが苦手でも、長時間一緒に過ごさなくて済む
- 1人で多くの教科の準備をする学級担任制と比べ、先生の負担が小さい
- 1年生から教科担任制とするデメリット
- 学級担任が児童と接する時間が少なくなることから、学力以外の部分、生徒の体調や生活面での変化を把握しにくい
■課題9
- 離婚した相手が養育費を支払わない場合があることから、行政による養育費の立て替え払い制度を創設すべきとの意見がある。
ついては、次の点について討論し、グループとしての意見をまとめなさい。- 行政による養育費の立て替え払い制度を創設することの是非
- 上記1.の結論によって生じる課題への対応策
◎メモ
厚生労働省の「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果」よると、養育費を受け取ると取り決め、実際に継続して養育費を受けている世帯は以下の割合です。
- 母子家庭:24.3%
- 父子家庭:3.2%
養育費を継続して受け取れていない世帯の方が圧倒的に多いです。
兵庫県の明石市では、全国に先立ち、養育費建て替え事業を2020年7月に開始しましたが、2021年3月に終了しています。
■課題10
- 現在、自動車を運転しながらスマートフォンや携帯電話を操作する「ながらスマホ」は法律で禁止されているが、それに加えて、道路や公園で歩きながらスマートフォンや携帯電話を操作する「歩きスマホ」を禁止すべきとの意見がある。
ついては、次の点について討論し、グループとしての意見をまとめなさい。- 条例により、「歩きスマホ」を禁止することの是非
- 上記1.の結論によって生じる課題への対応策
◎メモ
神奈川県大和市では、2020年7月、全国で初めて歩きスマホを禁止する条例「大和市歩きスマホの防止に関する条例」を制定しました。
罰則はないので、市民に対する意識啓発などを目的としているようです。
歩きスマホ禁止については、概ね賛成意見の人が多いと感じますが、「なんでもすぐ規制すればいいってもんじゃない」、「先に規制すべきことはたくさんある」など反対する人ももちろんいます。
海外を見ると、ハワイでは道路横断中の歩きスマホに対し、初回15~35ドルの罰金が課されます。
2.福島県庁

福島県庁の集団討論は、第2次試験の2回目に実施されます。
最終合格者は1次試験と2次試験の合計得点で決定します。
口述試験の配点は、2次試験280点中の250点ですが、集団討論単体での配点は不明です。
令和2年度は、新型コロナウイルスの影響で集団討論が中止となったため、ここでは令和元年度の課題を掲載。
♦大学卒程度
■配点
- 1次試験:180点
- 教養試験・専門試験
- 2次試験:280点
- 論文試験:30点
- 口述試験(個別面接2回・集団討論):250点
- 適性検査:適否
- 合計:460点
■課題1
企業の新卒採用活動の早期化について、企業側や就活生側のメリット・デメリットを踏まえて討論し、賛成か反対か、グループの意見をまとめなさい。
◎メモ
新卒採用活動の時期は、年々変更を繰り返しています。
- 2010年代前半卒
- 活動解禁:大学3年10月
- 採用選考解禁:大学4年4月
- 2013年~2015年卒
- 活動解禁:大学3年12月
- 採用選考解禁:大学4年4月
- 2016年卒
- 活動解禁:大学3年3月
- 採用選考解禁:大学4年8月
- 2017~2021年卒
- 活動解禁:大学3年3月
- 採用選考解禁:大学4年6月
早期化のメリットとしては、就職活動をする期間が長くなるため、学生は選考を多く受けられ内定を貰えるチャンスが増えます。
企業にとっても同様に、多くの学生を見ることができます。
デメリットは、早期化することにより就職活動は長期化し、学生は就活疲れを感じ、さらに学業が疎かになる恐れがあることです。
企業にとっては、早期から複数回採用試験を実施した場合、一定の時期に一括して採用試験を行うよりも、コスト的に負担がかかります。
♦資格免許職・学校栄養職
■配点
- 1次試験:200点
- 教養試験:80点
- 専門試験:120点
- 2次試験:280点
- 論文試験:30点
- 口述試験(個別面接2回・集団討論):250点
- 適性検査:適否
- 合計:480点
■課題1
歩きスマホを法律や条例等で罰則を規定して禁止することについて賛成か反対か、グループの意見をまとめなさい。
◎メモ
山形県庁の課題10と同じ内容ですね。
♦高校卒程度・学校事務職
■配点(土木を除く)
- 1次試験:200点
- 教養試験:200点
- 2次試験:280点
- 作文試験:30点
- 口述試験(個別面接2回・集団討論):250点
- 適性検査:適否
- 合計:480点
■課題1
歩きスマホを法律や条例等で罰則を規定して禁止することについて賛成か反対か、グループの意見をまとめなさい。
◎メモ
こちらも山形県庁の課題10と同じ内容です。
3.茨城県庁

♦大学卒業程度
茨城県庁の集団討論は、第2次試験の2回目に実施されます。
最終合格者は全ての試験の総合得点の高い順に決定します。
■配点
集団討論の配点は2次試験400点中100点です。
- 1次試験:300点
- 教養試験:150点
- 専門試験:150点
- 2次試験:400点
- 論文試験:50点
- 集団討論:100点
- 個別面接2回:250点
- 合計:700点
■課題1
- 本県は全国有数の農業大県ではあるものの、人口減少に伴う国内市場の縮小やグローバル化などを背景に、今後、産地間競争が一層厳しくなることが予想されています。
そのため、本県では、農林水産業を今後も競争力のある産業として強化していくため、メロンの「イバラキング」をはじめとする県オリジナル品種の開発、これらを活用した産地づくりや新たな販路開拓、ブランド化の推進、あるいはICTやロボット等を活用した生産性の高いスマート農業の推進などの施策を展開しています。
このような状況を踏まえて、以下のことについて話し合い,グループの意見をまとめてください。- 本県の農林水産業や農林水産物が置かれている状況について現状分析と課題の整理を行ってください。
- 1.を踏まえて、今後も本県の農林水産業を発展させ、「儲かる農業」を実現していくために、行政はどのような取り組みを行っていくべきかを考えてください。
◎メモ
茨城県の農業に関する基本データを紹介します。
茨城県の令和元年度の農業産出額の順位は以下のとおりです。
- 北海道 :12,593億円
- 鹿児島県:4,863億円
- 茨城県 :4,508億円
- 千葉県 :4,259億円
- 宮崎県 :3,429億円
全国3位で、農業大県ということが分かります。
また、県内の農業産出額の割合は、米が19.3%を占めています。
さらに茨城県には全国1位の農産物がたくさんあります。
鶏卵、かんしょ、メロン、ピーマン、れんこん、ほしいも、水菜、小松菜、切り枝、チンゲン菜、栗、芝、セリなど
4.まとめ

山形県庁、福島県庁、茨城県庁の集団討論について紹介しました。
これらの自治体を志望する方の参考になったら嬉しいです。
自治体によってはかなり抽象的なテーマを課すところもありますが、この3県は割と具体的な課題を出題している印象です。
討論できちんと発言するには、最低限、課題に対する知識が必要です。
事前に集団討論で出題されそうなテーマについては研究しておきましょう。
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