福井県庁の職員を目指している方へ。
福井県庁の公務員採用試験では、毎年集団討論(グループディスカッション)が実施されています。
どんな内容が出題されるのか気になる人もいると思います。
そこで今回は、実際に福井県庁の集団討論で出題された過去問を紹介。
また、それぞれの課題について簡単な考察もしています。
★目次
- 福井県庁の集団討論
- 実際の過去問
- まとめ
1.福井県庁の集団討論

福井県庁の集団討論は、1種採用試験(大卒程度)の2次試験で実施されます。
1種試験であれば、職種に関係なく集団討論が課されます。
♦集団討論の配点
試験全体の配点は以下のとおりです。
- 1次試験:300点
- 教養試験/SPI3:100点
- 専門試験:200点
- 適性検査Ⅰ:ー
- 2次試験:500点
- 論文試験:100点
- 口述試験:400点
- 集団討論
- 個別面接
- 適性検査Ⅱ:ー
- 外国語資格加点
- 合計:800点+加点
最終合格者は1次試験と2次試験の合計得点によって決定します。
口述試験の点数は、集団討論と個別面接合わせて400点ですが、集団討論のみの配点は不明です。
- 【関連記事】集団討論のコツについて知りたい方はこちら
- ⇒ 【公務員試験の集団討論を攻略するコツ】流れや取るべき行動を解説!
2.実際の過去問

今回紹介するのは、令和2年度の採用試験で出題された6題です。
- 観光戦略
- 新しい生活様式の定着
- 高齢社会対策
- 子どもの貧困問題
- 今後の学校教育
- 女性活躍推進
♦課題①:新型コロナウイルス感染症の影響下における観光戦略について
新型コロナウイルス感染症の拡大により、日本を訪れる外国人観光客の数が大幅に落ち込んでいる。このような社会経済情勢の変化により、本県においても、国内観光客の誘致などに重点を置くなどの転換が求められている。
特に 2023 年には、北陸新幹線福井・敦賀開業により、首都圏等と時間・距離が短縮する上、乗り換えなしでつながる時代が到来し、本県としてそのチャンスを十分に活かすことが必要である。
課題:今後、県が取り組むべき観光施策について議論してください。
■課題①の考察
北陸新幹線金沢ー敦賀間は、今のところ2023年度末に開業予定です。
ここが開通すると、「東京ー埼玉ー群馬ー長野ー新潟ー富山ー石川ー福井」と繋がります。
今までは石川県どまりだったこの沿線沿いからの観光客も、福井まで足を伸ばしてくれる可能性があります。
ただアクセスがよくなったとしても、福井県の知名度や魅力が伝わらないと、大幅な観光客増加はそれほど期待できません。
◎知名度があるのは東尋坊のみ
現状、おそらく福井県の観光名所で広く知られているのは「東尋坊」のみです。
もちろん近隣県に住んでいる人や福井について知識がある人は、ほかのスポットも知っているでしょうが、一般的な人は東尋坊しか知りません。
さすがに1つの観光名所を訪れるためだけに、遠くから観光に来る人は少ないです。
しかし、福井には、永平寺やめがねミュージアムなど魅力的なスポットは他にもあります。
観光施策として、そういったスポットを知ってもらうためのPR活動は大切です。
テレビ、雑誌、インターネット、SNSなどアピール方法はいろいろあります。
◎一人当たりの出費を増やせるか
また、コロナウイルスが流行中であれば、観光の自粛や人数の制限などが問題となります。
少ない観光客でも経済効果をもたらすように、1人当たり出費を増加させる工夫も必要です。
♦課題②:「新しい生活様式」の定着について
新型コロナウイルス感染症の拡大を予防するため、「新しい生活様式」の実践が求められている。
課題:今回示された「新しい生活様式」の実践例のうち、下記のことを県民の方に実践していただくため、県は県民に対しどのような働きかけや支援ができるか議論してください。
〇「新しい生活様式」の実践例(一部)
[日常生活の各場面別の生活様式]
□買い物
・電子決済の利用
□公共交通機関の利用
・混んでいる時間帯は避けて
・徒歩や自転車も併用する
□食事
・持ち帰りや出前、デリバリー利用
・屋外空間で気持ちよく
[働き方の新しいスタイル]
□テレワークやローテーション勤務
□時差出勤でゆったりと
□オフィスはひろびろと
□会議はオンライン
■課題②の考察
◎電子決済の利用
電子決済利用の普及については、利用可能な施設やサービスを増やすこと。
そのためには、まず自治体がお手本となり、様々なサービスにおいて電子決済可能な環境を整えておくべきです。
最近は電子決済が利用できる自治体も増えてきており、たとえば、福井県では自動車税種別割の支払いがPayPay、LINE Pay、モバイルレジを利用して行うことができます。
「ある支払いでは電子決済が利用できて、別の支払いでは利用できない」となると利用しづらいため、できる限り多くの行政サービスで利用できるように推進していくべきです。
また、PayPayに次ぎ利用者が多い楽天ペイについても、導入を検討してほしいところ。
◎徒歩や自転車も併用する
公共交通機関の利用を縮小させるための徒歩や自転車の併用については、ハード面の改善も大切です。
徒歩や自転車の利用をただ働きかけるだけでは、なかなか実践する人は少ないはず。
当然歩きやすい環境、乗りやすい環境を提供するべきです。
そのためには歩道の拡幅、自転車専用レーンの拡充、サイクルアンドライドの推進などが考えられます。
ハード面の改善は多くの予算を必要としますが、新型コロナウイルスが収まったとしても、渋滞緩和や健康促進に繋がるので、無駄ではないと言えます。
♦課題③:高齢社会対策について
医療の発達等により、日本人の平均寿命は上昇し続けており、今後「人生100年時代」が到達すると言われている。
こうした長寿命化に備え、生涯にわたる健康を志向し、年齢を重ねても元気に生活できる社会を作っていくこと、また、常に好奇心を持ち続け自身の能力や知識を磨きながら柔軟に成長していく社会を作っていくことが求められている。
課題:子どもから高齢者まで全世代にわたる「健康づくり」や高齢者の「社会参画の機会」を進めるため、行政はどのような施策を講ずるべきか議論してください。
■課題③の考察
◎健康づくりについて
県民の運動意欲を高めることは健康づくりに繋がります。
たとえば、大人向けのスポーツテストを行政が定期的に実施するのはどうでしょうか。
学生の頃にみんな経験があるスポーツテスト。
これを大人が実施すれば、自分の記録と年代別の平均を比較することができ、平均以下の人は健康・運動への意識が高まります。
また、平均以上の人もさらなる記録向上のため、運動が日常化するかもしれません。
◎高齢者の健康づくり
その他、高齢者に対してはグラウンドゴルフなど軽スポーツの推進です。
高齢者それぞれが熱中できる軽スポーツを見つけることができれば、外出する機会が増え、家にいるよりも確実に健康的な生活になります。
県主催による軽スポーツの大会を開催するなど、運動意欲を継続させる取り組みが大切です。
♦課題④:子どもの貧困問題について
厚生労働省が発表した「平成 28 年国民生活基礎調査」によると、子どもの貧困率は 13.9%と、7 人に 1 人の子どもが貧困状態にあるといわれている。
※子どもの貧困率:国民の年間所得の中央値の 50%に満たない所得水準の世帯の子ども(17 歳以下)の数を子ども全体の数で割ったもの
課題:子どもの貧困問題に対して、行政はどのような教育支援策や生活の安定に資するための支援策をとるべきか、子どもの貧困が生じる背景を踏まえて議論してください。
■課題④の考察
厚生労働省の「2019年 国民生活基礎調査」によると、子どもの貧困率は、平成24年の16.3%をピークに微減しており、平成30年は13.5%でした。
◎ひとり親世帯の約半数が貧困世帯
また、大人が二人以上いる世帯の貧困率は13.5%だったのに対して、ひとり親世帯の場合、貧困率は48.1%まで上がります。
つまり、ひとり親世帯の約半分が貧困世帯です。
子どもの貧困が生じる背景としては、当然世帯の低所得が原因に挙げられます。
ひとり親の場合は、家事や子育ての制約を受け、できる仕事と時間が限られるため、どうしても収入は低くなります。
◎低学歴、障害、病気も貧困の要因
また、ひとり親以外の世帯についても、きちんとした教育を受けられなかった人は就業先が限られ低所得になりがちです。
学歴と所得は相関関係にあることが様々なデータで明らかになっています。
そして、親が障害を抱えていたり病気罹っている場合も、就業は限られるため、低所得になる可能性が高くなります。
こういった背景を念頭に支援策を考えてみましょう。
♦課題⑤:今後の学校教育の在り方について
この春、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、全国の小中学校、高校において、長期間の休校措置がとられた。
今回の措置により、子ども達の学習の遅れ、精神的・肉体的な影響などが懸念され、オンライン学習の推進、9月入学への移行、子ども達のメンタルヘルス対応などが議論された。
課題:今回の感染拡大に伴い学校教育において生じた課題を整理したうえで、今後、行政としてどのような対応をしていくべきか議論してください。
■課題⑤の考察
◎オンライン学習についての課題
休校措置が増える場合、自宅での学習も必要となってきますが、そこでオンライン学習の需要も高まってきています。
ただ、オンライン学習に必要なパソコン、スマホ、タブレット端末などICT機器は、各家庭によって所有状況が異なり、全世帯が持っているわけではありません。
そのため、全ての学校でリアルタイムの双方向型のオンライン授業を行うことは難しく、実施する場合は、ICT機器の配布や通信環境の整備などが必要となってきます。
現時点で休業期間中は、配布プリントや録画された動画による学習が多く実施されています。
しかし、こういったライブではない学習のみでは、生徒が理解できているか把握はしづらいです。
コロナ渦に限らず、現在、ICT社会が広がりを見せているので、行政はICT機器の配備など、学習環境の整備を早急に進めていく必要があります。
◎教員の知識向上も
また、オンライン学習を効果的なものにするには、環境だけでなく、教員自身もオンライン学習に対応できる知識と技術も身に付けておく必要が生じてきます。
今後の教員採用試験においては、ICT利用の課題の導入も考えていくべきです。
ちなみに、令和4年度の兵庫県における、公立学校教員採用試験の中学(技術)では、既にICT機器を活用した模擬授業が内容に含まれています。
♦課題⑥:女性活躍推進について
平成 30 年版「働く女性の実情」(厚生労働省)によると、女性の労働力率を年齢階層(5 歳階級)別にみた場合、「20~24 歳」を除くすべての階級の労働力率について、比較可能な昭和 43 年以降、過去最高の水準となった。
しかしながら、女性の年齢階層別労働力率は 35~39 歳を底とする M 字型カーブを描いており、管理職比率も国際的には依然として低い水準にとどまっている。(M字カーブのグラフあり)
課題:結婚、出産をしても働き続けることを希望する女性が継続してその能力を発揮できる環境の整備には何が課題となるか、そして女性がその能力を十分に発揮できるよう県が取り組むべき施策について議論してください。
■課題⑥の考察
女性の労働力率は以下のようなM字カーブを描いています。
まだ、M字カーブではあるものの、年々改善してきています。
ちなみにドイツやスウェーデンなどは、日本のように一定の年齢層で労働力の落ち込みはなく、台形に近い形です。

◎M字カーブ改善要因
M字カーブ改善の要因としては、出勤時間に柔軟性のあるフレックスタイム制や、自宅でも働くことが出きるリモートワークが増加したこと、保育所等の待機児童の減少などを挙げることができます。
新型コロナウイルス流行の影響で、こういった働き方はさらに浸透する傾向です。
このほか、男性の育児休暇取得が、パフォーマンスではなく当たり前に長期間取得できるような世の中になれば、さらにM字カーブ改善が期待できます。
◎福井県庁の低い取得率
そして、こういった集団討論の課題を与えるからには、自治体が率先して、お手本を見せる必要がありますよね。
しかし、総務省の「育児休業取得率の状況」によると、残念なことに、福井県庁の令和元年の男性職員における、育児休業取得率はたったの1.7%でした。
これは愛媛県に次いで、全国で2番目に低い数字です。
◎そのほか参考データ
そのほか、平成30年の福井労働局の「グラフで見る福井県の女性労働」から関係データの引用です。
参考にしてみてください。
- 女性労働力率(H28)
- 全国平均:50.3%
- 福井県 :56.1%
- 女性の正社員比率(H27)
- 全国平均:45.5%
- 福井県 :53.9%
- 管理職に占める女性の割合(H29)
- 全国平均:14.8%
- 福井県 :9.0%
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3.まとめ

福井県庁の集団討論の過去問について紹介しました。
近年、福井県庁Ⅰ種の試験で2次試験の倍率が2倍を超えることはあまりありません。
それでも万全を期して、集団討論の対策も十分行っておきたいところ。
討論にしっかり参加できるように、出題されそうなテーマについては十分情報を仕入れておきましょう。
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