公務員試験では2次試験以降で集団討論を実施する自治体があります。
そこで今回は、青森県庁、岩手県庁、宮城県庁の集団討論(グループディスカッション)について。
令和2~4年度の採用試験で、実際に出題された集団討論のテーマを紹介します。
【この記事を書いた人】
・政令市の消防士と行政職、町役場を経験
・公務員試験は独学・予備校の両方を経験
・YouTube ⇒ ハチサン公務員
★目次
- 青森県庁(8題)
・大卒程度
・短大卒・高卒程度 - 岩手県庁(15題)
・Ⅰ種一般行政A - 宮城県庁(6題)
・大学卒業程度
・短期大学卒業程度 - まとめ
1.青森県庁(8題)
青森県庁では、グループワークとして2次試験で実施されます。
最終合格者は1次試験と2次試験の合計得点で決定します。
面接試験の配点が一番大きいですが、グループワーク単体の配点は分かりません。
♦大卒程度
■令和5年度の配点(行政・警察行政)
- 1次試験:100点
- 教養試験:50点
- 専門試験:50点
- 2次試験:200点
- 論文試験:50点
- 面接試験(グループワーク・個別面接):150点
- 合計:300点
■課題1(令和2年度)
このグループワークのメンバーで、「青森県の魅力を発信する番組」を企画することになりました。
番組の内容・発信方法について検討し、発表しなさい。
【メモ】
発信方法はテレビだけではありません。
ラジオでも発信できますし、YouTubeなどインターネットからも配信することが可能です。
番組の内容:観光地紹介、県内企業の紹介、高校・大学の紹介、県内で活動するスポーツチーム(ヴァンラーレ八戸や青森ワッツなど)の紹介、高齢者向けの健康に関するトピックなど
誰を出演させるか:知事、県庁職員、ゆるキャラ、ローカルタレント、一般の県民など
ちなみに青森県も「青森県広報広聴課」というYouTubeチャンネルを開設しています。
■課題2(令和2年度)
近年、クレジットカードや電子マネーなどによるキャッシュレス決済が広く利用されるようになっていますが、キャッシュレス決済を活用した地域の活性化を図るための取組について、グループとして意見をまとめ、発表しなさい。
【メモ】
キャッシュレス決済は主に公共交通機関を利用するとき、スーパーやコンビニなどで買い物するときに利用されています。
公共交通機関を利用する際のキャッシュレス決済はSuica、PASMO、Kitakaなどが挙げられます。
買い物をする際のキャッシュレス決済としては、従来のカード決済、スマホやカードをかざして決済、QRコードを読み取るなど。
- 従来型:クレジットカード、デビットカードなど
- スマホやカードをかざす:WAON、nanacoなど
- QRコード読み取り:Paypay、楽天ペイなど
■課題3(令和4年度)
県が公表した就業状態等基本集計結果によると、2020年10月現在で、県内の15歳以上の人口に占める労働力人口(働く意志と能力を持つ人口)は5年前(2015年)と比較して22,266人減少している。
労働力人口の減少は本県社会にどのような影響をもたらすか、また、それを克服するためにどのような取組が必要か、グループでまとめ、発表しなさい。
【メモ】
「労働力人口」は何歳未満という定義はないので、70歳でも80歳でも労働力人口に含みます。
つまり、一つは高齢社会により働く能力のない高齢者が増えたことが労働力人口の減少に関係していると考えられます。
また、労働力人口に含めるには働く意志を持っていることも条件に入るため、ニートなど働く意志のない人を減らしていく必要があります。
■課題4(令和4年度)
北海道新幹線が2030(令和12)年度末に札幌まで延伸される予定であるが、青森県に与えるメリット・デメリットを挙げ、それに関連して県としてどのような取組が考えられるか、グループで検討し、発表しなさい。
【メモ】
現在の開業している北海道新幹線の駅は以下のとおり。
- 新青森(青森県)
- 奥津軽いまべつ(青森県)
- 木古内(北海道)
- 新函館北斗(北海道)
ここから「新八雲 ⇒ 長万部 ⇒ 俱知安 ⇒ 新小樽 ⇒ 北海道」と接続していく予定です。
王道のメリットとデメリットは旅行客の増加と人口流出ですね。
♦短大卒・高卒程度
■配点(一般事務・教育事務・警察事務)
- 1次試験:100点
- 教養試験:100点
- 2次試験:200点
- 作文試験:50点
- 面接試験(グループワーク・個別面接):150点
- 合計:300点
■課題1(令和2年度)
県産品を活用したお弁当を考案し、売上げを伸ばすためのPR方法や販売方法をまとめ、発表しなさい。
【メモ】
青森県の特産品はりんご、ごぼう、にんにくが有名です。
- りんごの収穫量(令和4年)
- 1位:青森県(60%)
- 2位:長野県(18%)
- 3位:岩手県(6%)
- ごぼうの収穫量(令和4年)
- 1位:青森県(37%)
- 2位:茨城県(12%)
- 3位:北海道(9%)
- にんにくの収穫量(令和4年)
- 1位:青森県(66%)
- 2位:北海道(5%)
- 3位:香川県(4%)
そのほかにも、ヒラメ、ホタテ、だいこん、にんじん、ナシなど食材は豊富です。
PR方法:CM、テレビ番組・ラジオ番組・YouTube、SNS、県のホームページ、雑誌の特集、県民だより、広告、冊子配布など
■課題2(令和2年度)
青森県の魅力をPRするためのスマートフォン向けゲームアプリを皆さんで開発し、その内容と、ダウンロード数を増やすための工夫について発表しなさい。
【メモ】
スマホゲームの利用者は50歳未満が多く、50歳以上の利用者は全体の10%以下になります。
そのため、ダウンロード数を増やすためには、ユーザー数が多い50歳未満に合わせたコンテンツを作る必要があります。
予算やコストを無視していいのであれば、もちろん有料ではなく無料でダウンロードをさせるべきですね。
■課題3(令和4年度)
青森県の平均寿命は全国最下位だが、その要因の一つとして、野菜の摂取量不足など栄養バランスの偏りがあると考えられている。
県民の野菜の摂取量を増やすために、どのような取組が考えられるか、グループでまとめ、発表しなさい。
【メモ】
青森県の平均寿命は徐々に延びていますが、依然として最下位です。
- 男性
- 1位 滋賀 82.73歳
- 2位 長野 82.68歳
- 3位 奈良 82.40歳
- 45位 福島 80.6歳
- 46位 秋田 80.48歳
- 47位 青森 79.27歳
- 女性
- 1位 岡山 88.29歳
- 2位 滋賀 88.26歳
- 3位 京都 88.25歳
- 45位 栃木 86.89歳
- 46位 福島 86.81歳
- 47位 青森 86.33歳
青森県は昔から食塩の摂取量が多いと言われていますね、
■課題4(令和4年度)
人口減少が進む中、電車、バスなどの地域の公共交通機関の維持が課題となっているが、公共交通網が縮小することで地域社会にどのような影響があるのか、また、どのような対策が必要か、グループでまとめ、発表しなさい。
【メモ】
公共交通網が減少すると交通難民が増加します。
例えば車を運転することができない高齢者は外出することが難しくなります。
そうなると高齢者が孤立してしまいますし、人々の外出が減ることで経済の流れも鈍化。
また、公共交通機関を通学に利用していた学生、利用しようとしていた学生も通学困難になるかもしれません。
【関連記事】
⇒ 公務員試験(政令指定都市)の集団討論で出題されたテーマ80題を紹介
2.岩手県庁(15題)
岩手県庁では3次試験でグループワークが実施されます。
最終合格者は全ての総合得点で決定しますが、グループワーク単体での配点は分かりません。
♦Ⅰ種一般行政A
■配点
- 1次試験:500点
- 教養試験:200点
- 専門試験:300点
- 2次試験:450点
- 論文試験:100点
- 人物試験:350点
- 3次試験:350点
- 人物試験(個別面接・グループワーク):350点
- 合計:1,300点
■課題1(令和2年度)
「自分らしく自由な時間を楽しむことができる岩手」について
【メモ】
逆説的に「自分らしく自由な時間を楽しむことができない」状況をいくつか挙げてみます。
- 仕事の休みが少なかったり、残業が多い
- 自由な時間はあっても楽しむために必要なお金がない
- 親や親族の介護で忙しい
- 病気やケガ健康状態が悪い
こういった状況に陥らない社会を作る必要があります。
■課題2(令和2年度)
「安心して子育てをすることができる岩手」について
【メモ】
子育てに不安があると、子どもを作ることすら躊躇してしまいますよね。
安心して子育てができるには、以下のような不安を解消していく必要がありそうです。
- 子育てにかかる費用が家計を圧迫しないか
- 働きながら子育てできるか
- 家族に協力してもらえる
- 子育ての悩みを相談できるか
- 子どもが犯罪に巻き込まれないか
- 子どもが病気になったら
■課題3(令和2年度)
「将来に向かって可能性を伸ばし、自分の夢を実現できる岩手」について
【メモ】
漠然とした課題で難しいですね。
まず夢というのは人それぞれ違いますが、たとえばどんなものがあるでしょうか。
- コンクールや大会に出て優秀な成績を収めたい
- 目指す職業に就きたい
- お店を開きたい
- 幸せな家庭を築きたい
- 人の役に立ちたい
- お金持ちになりたい
- 老後にのんびり暮らした
これらの夢は大きく4つ(教育につながる夢、仕事に関する夢、お金に関する夢、生活・福祉に関する夢)に分類できそうです。
■課題4(令和2年度)
「やりがいと生活を支える所得が得られる仕事につくことができる岩手」について
【メモ】
人により、やりがいを感じる仕事は様々です。
そのため、仕事の選択肢が多い方がやりがいを感じる仕事は見つかりやすいです。
一方、生活を支えるためには、ある程度の収入が必要となることから、たとえば、非正規雇用ではなく正規の雇用を増やす取り組みなどが求められます。
ちなみに令和5年の岩手県の最低賃金は893円、最下位です。
*東北6県の最低賃金
- 29位:宮城県:923円
- 32位:福島県:900円
- 〃 位:山形県:900円
- 37位:青森県:898円
- 40位:秋田県:897円
- 47位:岩手県:893円
厚生労働省:地域別最低賃金の全国一覧
■課題5(令和2年度)
「豊かな歴史や文化を受け継ぎ、愛着や誇りを育んでいる岩手」について
【メモ】
歴史や文化を受け継ぐには、誰かが伝えていかなければなりません。
- 地域住民が伝えていく
- 学校の授業で伝える
- 博物館・美術館・民俗資料館の展示を通して伝える
- テレビや書籍などで情報を発信する
しかし、ただ歴史や文化を伝えても、それだけでは愛着や誇りは持てません。
歴史は変えることができませんが、愛着や誇りを持てるほど魅力を感じるように、工夫して伝えることはできるかもしれません。
以下のホームページを見ると、岩手県の文化について知ることができます。
岩手県文化スポーツ部文化振興課:いわての文化情報大事典
■課題6(令和3年度)
東日本大震災津波からの復興の取組や教訓等の発信」について
■課題7(令和3年度)
「外国人県民等が暮らしやすい環境づくり」について
■課題8(令和3年度)
「人交密度向上プロジェクト」について
■課題9(令和3年度)
「若者の活躍支援」について
■課題10(令和3年度)
「世界遺産のPR」について
■課題11(令和4年度)
「再生可能エネルギーの利活用」について
■課題12(令和4年度)
「三陸防災復興ゾーンプロジェクト」について
■課題13(令和4年度)
「移住・定住の促進」について
■課題14(令和4年度)
「地域コミュニティ」について
■課題15(令和4年度)
「結婚支援」について
【関連記事】
⇒ 公務員試験の集団討論【山形・福島・茨城県庁】過去問や配点など紹介
3.宮城県庁(6題)
宮城県庁では2次試験で集団討論が実施されます。
最終合格者は1次試験と2次試験の合計得点で決定します。
集団討論単体の配点は分かりません。
♦大学卒業程度
■配点(全職種(保健師・管理栄養士を除く))
- 1次試験:200点
- 教養試験:100点
- 専門試験:100点
- 2次試験:400点
- 論文試験:100点
- 人物試験(個別面接・集団討論):300点
- 合計:600点
■課題1(令和2年度)
「宮城県で育った若者に県内で就職してもらうためには、県としてどのような取組が有効か」というテーマで議論し、グループの意見をまとめなさい。
【メモ】
県外に就職する人のパターンは、大きく分けると以下の3つに当てはめられます。
- 県内から「仕事を求めて」県外に就職する
- 県内から「都会での暮らしを求めて」県外に就職する
- 県外の大学などに通っていた学生がそのまま県外に就職
つまり、雇用環境の改善はもちろんですが、宮城県の生活環境の改善、教育環境の改善も間接的に有効だと言えそうです。
ちなみに、令和4年度の宮城県内の学生の県内・県外の就職比率は以下のとおり。
- 県内就職者:6,778人(比率:40.6%)
- 県外就職者:9,919人(比率:59.4%)
県外に就職する人の方が多い状況です。
宮城労働局:新規大卒者等の就職状況
■課題2(令和3年度)
「多様な働き方が可能な社会を実現するためには,どのような取組が有効か」というテーマで議論し,グループの意見をまとめなさい。
■課題3(令和4年度)
「宮城県の特産品を一つ挙げ,その特産品の販路を拡大するためには,どのような取組が有効か」というテーマで議論し,グループの意見をまとめなさい。
♦短期大学卒業程度
■課題1(令和2年度)
「子どもを交通事故から守るためにはどのような取組が必要か」というテーマで議論し、グループの意見をまとめなさい。
【メモ】
子どもを交通事故から守るには、ハード面とソフト面の両方からアプローチすることができます。
ハード面では、歩道や自転車レーンの拡充、無電柱化の推進など。
ソフト面では、交通ルール違反に対する厳罰化、子どもへの教育、ドライバーへの意識づけ、地域による見守りなどが考えられます。
宮城県警の平成22年~26年の調査によると、小学生の歩行中の事故は、16~18時に最も多く発生しているようです。
学校の終わりや友達と遊んだ帰りに事故が発生しています。
■課題2(令和3年度)
「子どもを虐待から守るために,行政としてどのような取組が必要か」というテーマで議論し,グループの意見をまとめなさい。
■課題3(令和4年度)
自転車は便利な乗り物である一方,危険な運転による交通事故も発生している。「自転車の安全利用を促進するために,行政としてどのような取組が必要か」というテーマで議論し,グループの意見をまとめなさい。
【関連記事】
⇒【公務員試験の集団討論を攻略するコツ】流れや取るべき行動を解説!
4.まとめ
青森県、岩手県、宮城県の集団討論で、実際に出題されたテーマについて紹介しました。
集団討論で出題されそうなテーマの知識はあらかじめ、頭に入れておきましょう。
♦各公務員予備校を徹底比較!
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