なんでこんなに試験科目が多いんだ!
公務員を目指そうと考えている方、もしくは勉強を既に始めている方の中には、筆記試験の科目数の多さに、不安になる人もいるかもしれません。
ただ、公務員試験には「捨て科目」という考え方があります。
今回はこの捨て科目という考え方、そしてその戦略についてゼロから解説!
【この記事を書いた人】
・政令市の消防士と行政職、町役場を経験
・公務員試験は独学・予備校両方で合格を経験
・YouTube ⇒ ハチサン公務員
★目次
- 捨て科目とは?
・全ての科目を勉強するのは大変
・満点を取る必要はない
・6割7割ねらい - 捨て科目戦略の大事なポイント
・出題数
・難易度
・参考 - ちょっとした注意点
・筆記の点数を引き継ぐパターン
・配点比率が違うパターン
・捨て科目だけに注目しない - 捨てテーマという考え方
- おわりに
1.捨て科目とは?
♦全ての科目を勉強するのは大変
公務員試験でメインとなる筆記試験は、教養試験と専門試験の2つです。
教養試験のみを実施している試験と、教養試験と専門試験の両方を実施している試験に分かれます。
共に科目数は半端なく、代表的な公務員試験である地方上級(全国型)の場合、教養試験は約16科目・50問、専門試験で約14科目・40問が出題されます。
限られた時間で約30科目すべてを攻略することは、時間的に到底難しいです。
教養試験のみでも、全科目勉強することはかなりの時間を必要とします。
♦満点を取る必要はない
そこで登場するのが捨て科目という考え方。
すべての科目を勉強するのではなく、勉強する科目と、初めから勉強せずに得点を諦める科目に分けて、学習していく方法です。
あくまで目安ですが、公務員試験ではだいたい、6割の点数でボーダーライン、6割5分~7割ほど点数を取ると安全圏です。
つまり、満点を取る必要はありません。
65%程度の正解を狙いに行けばいいのです。
♦6割7割ねらい
■欲張ると中途半端に
もしも、公務員試験に充てられる時間が無限にあるのであれば、全科目を網羅的に勉強して高得点を狙いに行けるかもしれません。
ただ現実的には時間は有限であり、勉強時間が十分とれない人が大半です。
限られた時間ですべての科目で得点を狙いに行くと、全体的に薄い勉強しかできません。
その結果、どの科目もモノにできず、低い点数になってしまいます。
■時間がないなら捨て科目
一方、捨て科目を作ると、その科目での得点は期待できないですが、残りの科目に割ける時間は多くなるため、満点は無理でも、7割は狙いにいくことができます。
しかも捨てた科目であっても、五肢択一の問題なので、正解する可能性がゼロとは限りません。
ただ、教養試験のみが実施される試験の場合は、捨て科目を作らずに全て勉強することも可能です。
教養試験のみの試験でも、試験日まで勉強時間があまり確保できない人や、かなり苦手意識の強い科目がある人などは、捨て科目を作る戦略もありです。
2.捨て科目戦略の大事なポイント
しかし、何も考えずに捨て科目を選んでいい訳ではありません。
闇雲に捨て科目を作ると、逆に点数が取れずに悲惨な結果になってしまいます。
捨て科目を適切に決めるには、各科目の出題数と難易度の2つをきちんと把握する必要があります。
♦出題数
公務員試験は国の機関や自治体によって、出題される科目の内訳が違います。
例えば、地方上級(全国型)の教養試験では、50問中、数学は1問しか出題されませんが、東京消防庁Ⅰ類の教養試験では、45問中、4問も出題されます。
さらに、国家一般職(大卒程度)の教養試験では数学は1問も出題されません。
このように各試験によって、出題される科目ごとの問題数は違うので、試験によって重要度も全く異なります。
地方上級(全国型)では数学を捨てることは可能ですが、東京消防庁では全体の約1割を占める重要科目なので、捨てるべきではありません。
♦難易度
さらに、捨て科目を作るうえで、出題数と併せて考えるべきことは各科目の難易度です。
各科目の難易度は一律に同じレベルではなく、科目によって多少レベルのバラつきがあります(特に専門科目の難易度には差がある)。
同じ勉強時間を費やしても、点を取りやすい科目と、点が取りづらい科目があるのです。
例えば、専門試験で民法と憲法がそれぞれ2問ずつ出題される試験があったとします。
どちらか一方だけ捨てようと思った場合、出題数は同じなので、難易度を見て判断する必要があります。
この場合、憲法と民法では明らかに民法の方が難易度が高いため、より解きやすい憲法は残し、民法を捨て科目にするという選択をすべきです。
■出題数と難易度の把握が必須
このように捨て科目を考える際は、単純に決めるのではなく、まず志望先の各科目の出題数と、各科目の難易度を把握することが大前提です。
そのうえで、戦略的に取捨選択することで合格する可能性が上がります。
自分の志望先とは違う試験の話、一般論だけ聞いて決めないように。
得た情報を自分の状況に落とし込んで考えることが重要です。
【関連記事】
⇒【公務員試験の教養科目】19科目の難易度を比較紹介★★★☆
⇒公務員試験【専門科目の難易度】21科目の難易度を格付け比較
♦参考
出題数と難易度を基に、捨て科目の選び方を参考程度に紹介します。
ここでは、架空の試験の出題数と難易度を表示しているので、それを使って考えます。
科目 | 出題数 | 難易度 |
---|---|---|
現代文 | 6 | 1 |
英文 | 5 | 1 |
判断推理 | 7 | 1 |
数的推理 | 6 | 2 |
資料解釈 | 3 | 2 |
時事 | 3 | 2 |
物理 | 1 | 3 |
化学 | 1 | 3 |
生物 | 1 | 3 |
日本史 | 1 | 4 |
世界史 | 1 | 4 |
思想 | 1 | 4 |
地理 | 1 | 1 |
政治 | 2 | 1 |
経済 | 1 | 1 |
合計 | 40 | ー |
出題数を見ると、この試験では1問しか出題されない科目が8科目、2問出題される科目が1科目あります。
勉強を頑張っても、1点もしくは2点しか取れないため、この9科目から捨て科目を選ぶといいです。
次にこの9科目の難易度を見ると、地理、政治、経済の難易度が低いことが分かります。
出題数は少ないですが、難易度が低く点数が取れそうなため、この科目は勉強してもよさそうです。
残りの6科目は、出題数が少ないくせに難易度が高いことから、捨て科目の筆頭です。
難易度が最も高い日本史、世界史、思想が捨て科目最有力ですが、難易度の差が小さい場合は、自分の得意・不得意の照らし合わせて判断しましょう。
※出題数と難易度は参考のための架空情報です。
具体的な捨ててもいい科目・必ず押さえるべき科目については、今後別の記事で紹介します。
3.ちょっとした注意点
♦筆記の点数を引き継ぐパターン
筆記試験の点数が2次試験以降にも反映され、総合得点で最終合格者が決まるような採用試験では注意が必要です。
1次の筆記試験に合格した人が、2次の面接試験を受けた場合、1次試験の点数はリセットされ、2次試験の点数のみで最終合格者を決める官公庁は多いです。
しかし、1次試験の点数を2次試験の採点にも加算する官公庁もあります。
ただ、引き継ぐ場合でも、面接試験のウェイトが大きくなるため、そこまで筆記試験の点数を気にする必要のない試験が多いです。
一方で、筆記試験の点数を引き継ぎ、なおかつ、筆記の比重が高い試験もありますので、その場合は注意が必要です。
例えば、国家一般職試験などがそれにあたります。
この場合、捨て科目を作り過ぎて筆記の点数が低いと、2次試験以降に影響してきます。
■筆記の点数持ち越しの配点例
【宮城県庁の配点比率】
教養試験・専門試験の配点は全体的に見ると低いです。
- 教養試験:1/6
- 専門試験:1/6
- 論文試験:1/6
- 人物試験:3/6
【国家一般職の配点比率】
教養試験・専門試験の配点だけで6/9占めています。
- 教養試験:2/9
- 専門試験:4/9
- 論文試験:1/9
- 人物試験:2/9
♦配点比率が違うパターン
教養試験と専門試験の両方を実施する採用試験の場合、教養試験に比べ、専門試験の配点比率の方が高くなっている試験もあります。
その場合、専門試験よりも教試試験の捨て科目を若干多めにして、専門試験でより得点できるようにした方がいいです。
ただ、あくまで気持ち程度。
なぜなら、教養試験、専門試験ともに基準点よりも低い点数を叩き出してしまうと、その時点で採点されずに試験に落ちてしまうからです。
極端な偏りはないように。
受験案内に配点の内訳が書いてあることも多いので、志望先の受験案内を確認してみましょう。
♦捨て科目だけに注目しない
さらに、捨て科目を選ぶ際には、どの科目とどの科目で点数を確保し、その結果全部で何割の点数が取れるか、といった全体像をイメージしておくことが大切です。
設計した段階で、6割取れそうもない状態であればそれは間違った設計をしています。
甘い見通しのせいで、落ちてしまう可能性も十分あります。
例えば、50点満点の試験において、7割(35点)得点することを目標にするため、15点分を捨て科目にする、というような設計は間違いです。
捨てずに勉強した科目であっても、実際に完璧に点数を取ることはほとんどできないので、15点分捨てる時点で、7割採ることは厳しいです。
なので「どの科目を勉強するのか」、「その科目は何割程度取れそうか」、「捨て科目でも予備知識で得点できるチャンスはあるか」など、具体的に全体を設計して、見通しを立てておきましょう。
【関連記事】
⇒ 教養試験の捨て科目!20種の公務員試験の具体的な捨て科目を説明
【関連記事】
⇒【県警・警視庁の警察官採用試験】捨てる科目と押さえる科目はこれ
4.捨てテーマという考え方
♦テーマ単位で捨てる
これまで捨て科目という考え方を紹介してきましたが、これを発展させた戦略で「捨てテーマ」という考え方があります。
これは、捨て科目のように1科目まるごと捨てるのではなく、科目の中でテーマを選別して、コスパの悪いテーマを捨てるというやり方です。
各科目は、その中でさらにテーマ(単元・章)がいくつかに分かれています。
例えば、物理の場合、エネルギーと運動量、力のつりあい、電流と磁場など。
各採用試験では、それぞれでよく出るテーマと、あまり出題されないテーマがあります。
地方上級(全国型)や市役所C日程では「エネルギーと運動量」は、ほとんど出題されません。
国家一般職では「電流と磁場」が出題されることは少ないです。
こういった試験ごとの出題頻度が少ないテーマのみを、捨てるという方法も戦略のひとつです。
■逆のパターンもあり
また、反対のやり方もあります。
「元々は捨て科目を複数つくってたけど勉強時間が確保できそう」
このように試験勉強の終盤になると、想定より時間が余ることも考えられます。
こういう場合は捨て科目の中の頻出テーマだけをピックアップして勉強するというパターンも行けます。
【関連記事】教養・専門試験以外にも論文試験を課すところは多いです
⇒【公務員試験の論文】オススメの参考書は?17冊を徹底比較
5.おわりに
捨て科目の考え方について説明しました。
捨て科目を選ぶには志望先の出題数と科目の難易度、この2つのポイントが大切です。
自分の志望先、そして自分の状況やスペックと照らし合わせて、戦略的に捨て科目を選ぶようにしましょう。
勉強頑張ってください。