消防士を目指す方に向けた記事です。
消防士の採用試験は、他の公務員採用試験と違い、筆記や面接試験だけでなく体力試験も実施されます。
しかし、体力試験と言っても消防本部によって実施される種目は異なります。
今回は、日本の主要な消防本部(東京消防庁+政令指定都市消防)21か所で課される体力試験の種目をまとめました。
【この記事を書いた人】
・政令市の消防士と行政職、町役場を経験
・公務員試験は独学・予備校両方で合格を経験
・YouTube ⇒ ハチサン公務員
★目次
- 2パターンの評価方法
- 各消防本部の体力試験種目一覧
- 種目実施数
- 種目の解説
- 必要な体力の目安
- まとめ
1.2パターンの評価方法
おそらく日本にあるほとんどの消防本部で体力試験が実施されますが、評価方法には2パターンあります。
1つは、成績を点数化し、優劣をつけるパターン。
そのため、体力があるに越したことはありません。
もう1つは、点数化はせず、設定されている基準をクリアすれば体力試験は合格というパターン。
こっちの場合は、最低限の体力が備わっているかを見ているので、そこまでハードルは高くありません。
2.各消防本部の体力試験種目一覧
♦掲載消防本部
紹介するのは以下の21消防本部です。
- ①札幌市消防局
- ②仙台市消防局
- ③さいたま市消防局
- ④千葉市消防局
- ⑤東京消防庁
- ⑥横浜市消防局
- ⑦川崎市消防局
- ⑧相模原市消防局
- ⑨新潟市消防局
- ⑩静岡市消防局
- ⑪浜松市消防局
- ⑫名古屋市消防局
- ⑬京都市消防局
- ⑭大阪市消防局
- ⑮堺市消防局
- ⑯神戸市消防局
- ⑰岡山市消防局
- ⑱広島市消防局
- ⑲北九州市消防局
- ⑳福岡市消防局
- ㉑熊本市消防局
浜松市消防局については試験種目のデータがありません。
♦①札幌市消防局
体力検査・・・二次試験で実施
- 握力
- 上体起こし
- 立ち幅とび
- 長座体前屈
- 反復横とび
- 20mシャトルラン
※令和3年度データ
♦②仙台市消防局
体力検査・・・二次試験で実施
- 握力
- 上体起こし
- 立ち幅とび
- 長座体前屈
- 反復横とび
- 20mシャトルラン
♦③さいたま市消防局
体力検査・・・一次試験で実施
- 握力
- 上体起こし
- 長座体前屈
- 反復横とび
- 立ち幅とび
- 持久走(男性1,500m走、女性 1,000m走)
♦④千葉市消防局
体力検査・・・一次試験で実施
- 握力
- 反復横とび
- 立ち幅とび
- 腕立て伏せ
- シャトルラン
♦⑤東京消防庁
体力検査・・・二次試験で実施
- 1km走
- 反復横とび
- 上体起こし
- 立ち幅とび
- 長座体前屈
- 握力
- 腕立て伏せ
♦⑥横浜市消防局
体力検査・・・二次試験で実施
- 腕立て伏せ
- 懸垂
- SST(10m往復持久走)
♦⑦川崎市消防局
体力検査・・・一次試験で実施
- 握力
- 上体起こし
- 長座体前屈
- 反復横とび
- 立ち幅とび
- 20mシャトルラン
- 腕立て伏せ
♦⑧相模原市消防局
体力検査・・・二次試験で実施
- 握力
- 立幅跳び
- 上体起こし
- 腕立て伏せ
- 反復横跳び
- 5分間走
- 懸垂
♦⑨新潟市消防局
体力検査・・・一次試験で実施
- 握力
- 腕立伏臥腕屈伸
- 反復横とび
- 立ち幅とび
- 長座体前屈
- シャトルラン
※検査種目を変更する場合があります
♦⑩静岡市消防局
体力測定・・・一次試験で実施
- 握力
- 上体起こし
- 長座体前屈
- 反復横とび
- 立ち幅とび
- 20mシャトルラン
♦⑪浜松市消防局
体力検査・・・二次試験で実施
種目の記載なし
♦⑫名古屋市消防局
体力検査・・・二次試験で実施
- 上体起こし
- 握力
- 長座体前屈
- 反復横とび
- 立ち幅とび
- 20mシャトルラン(往復持久走)
♦⑬京都市消防局
体力試験・・・二次試験で実施
- 握力
- 上体起こし
- 長座体前屈
- 反復横跳び
- SST(10m往復持久走)
- 立ち幅跳び
♦⑭大阪市消防局
体力試験・・・一次試験で実施
- 握力
- 上体起こし
- 長座体前屈
- 反復横とび
- 20mシャトルラン
- 立ち幅とび
♦⑮堺市消防局
体力試験・・・二次試験で実施
- 握力
- 上体起こし
- 長座体前屈
- 反復横とび
- 20mシャトルラン
- 立ち幅とび
♦⑯神戸市消防局
体力検査・・・二次試験で実施
- 握力
- 立ち幅跳び
- 反復横跳び
- 長座体前屈
- 上体起こし
- シャトルラン
♦⑰岡山市消防局
体力試験・・・二次試験で実施
- 握力
- 立ち幅跳び
- 反復横跳び
- 上体起こし
- 腕立て伏せ
- 走力
上記の種目等から当日指定。
♦⑱広島市消防局
体力試験・・・三次試験で実施
- 握力
- 上体起こし
- 長座体前屈
- 反復横跳び
- 20mシャトルラン
- 立ち幅跳び
♦⑲北九州市消防局
体力テスト・・・一次試験で実施
- 握力
- 上体起こし
- 立ち幅跳び
- 反復横跳び
- 長座体前屈
♦⑳福岡市消防局
体力試験・・・二次試験で実施
- 握力
- 上体起こし
- 長座体前屈
- 反復横とび
- 20mシャトルラン
- 立ち幅とび
♦㉑熊本市消防局
体力テスト・・・一次試験で実施
- 握力
- 時間往復走
- 腕立伏臥腕屈伸
- 上体起こし
- 立ち幅とび
3.種目実施数
21消防本部のうち、種目データがあるのが20消防本部。
そして各種目が、いくつの消防本部で実施されているかは以下のとおりです。
- 持久走・シャトルラン等:19/20か所
- 握力 :19/20か所
- 立ち幅跳び:19/20か所
- 反復横跳び:18/20か所
- 上体起こし:17/20か所
- 長座体前屈:15/20か所
- 腕立て伏せ:8/20か所
- 懸垂 :2/20か所
「持久走・シャトルラン等」、「握力」、「立ち幅跳び」、に関しては、19の消防本部の体力試験で実施されています。
意外と「腕立て伏せ」の実施は半数以下で、「懸垂」については20消防本部中2消防本部しか実施していません。
体力試験は体育館の中で実施されることが多いので、館内に鉄棒がなく懸垂が実施しづらいことから、懸垂を実施しない消防本部が多いと思われます。
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4.種目の解説
こちらは一般的な種目の説明です。
スポーツ庁の実施要項を基に抜粋しています。
各消防本部によって、実施方法や計測方法は異なります。
- ①握力
- ②上体起こし
- ③持久走、20mシャトルラン、時間往復走
- ④立ち幅とび
- ⑤反復横とび
- ⑥長座体前屈
- ⑦腕立て伏せ、腕立伏臥腕屈伸
- ⑧懸垂
♦①握力
直立の姿勢で、握力計の針が外側になるように持ちます。
体を動かしたり、腕を体に押し当てたりせずに、力いっぱい握りしめます。
左右交互に2回ずつ測定し、その平均が記録となります。
♦②上体起こし
マットの上で仰向けになり、両膝の角度は90度に保ちます。
両手を軽く握り、両腕を胸の前に組みます。
補助者が測定されれる人の両膝を抑え固定します。
合図で、両肘と両大腿部が付くまで上体を起こし、その後元の姿勢に戻します。
30秒間で何回できたかを測りますが、きちんと背中がマットに戻らないとカウントされません。
♦③持久走、20mシャトルラン、時間往復走
■持久走
持久走は、5分間でどのくらいの距離を走れたかなど距離を計測するパターンと、1,500mを何分で走れたかなど、タイムを計測するパターンがあります。
■20mシャトルラン
シャトルランは20m幅に2本ラインがあり、その間を何回往復できたか計測します。
音に合わせて往復をくり返します。
■時間往復走・SST
時間往復走は、一定の幅(7~8mなど)に2本ラインがあり、その間を短い制限時間内に何回往復できたか計測します。体力よりも瞬発力が重視される種目です。
SSTはシャトルスタミナテストの略です。
10m幅に置かれたポールの間を3分間折り返し走り、その距離を計測します。
♦④立ち幅跳び
つま先が踏み切り線に揃うように立ち、両足で同時に踏み切って前に跳びます。
着地後、最も踏み切り線と近い位置が記録となります。
これを2回計測します。
♦⑤反復横跳び
100㎝間隔で3本のラインがあります。
中央ラインをまたいで立ち、合図で右のラインをまたぐか、踏みます。
そのまま、右から中央にサイドステップで移動し、中央→左→中央→右→中央と繰り返し移動します。
それぞれのラインを通過するごとに1点となり、「はじめ→右→中央→左→中央→右」、これで5点となります。
2回実施し、良い方の得点が記録となります。
外側のラインを踏まない、またがない、中央のラインをまたがない、こういった場合はカウントされません。
♦⑥長座体前屈
座った姿勢で足を伸ばし、壁に背中とお尻をぴったりつけます。
胸を張り背筋を伸ばし、測定器(厚紙と空箱で作った小さなテーブルの様なもの)に手を掛け、両肘を伸ばした状態でセットします。
両手を測定器から離さず、ゆっくりと前屈して、できるだけ遠くまで滑らせます。
測定器が進んだ距離が記録となります。
2回実施し、良い方の記録を取ります。
靴は脱ぎ、膝が曲がらないように注意します。
♦⑦腕立て伏せ、腕立伏臥腕屈伸
両足を補助台の上に乗せ、両手を肩幅に開き、腕立て伏せの姿勢をとります。
両手は、両腕を伸ばしたときに床面に対し垂直になる位置につきます。
アゴが床につくまで腕を曲げ、また伸ばします。
音に合わせて2秒に1回のペースで続けます。
途中でつぶれたり、2回連続間に合わなくなれば終了です。
♦⑧懸垂
懸垂は鉄棒に手を掛け両手を伸ばし、順手の状態でセットします。
合図で体を上に引き寄せ、アゴを鉄棒にタッチさせることで1回カウントされます。
戻る場合は、腕を完全に伸ばしきります。
アゴをきちんとつけなかったり、戻るときに腕を伸ばしっきていないとカウントされません。
また、反動を使わないように注意します。
5.必要な体力の目安
♦日本人の平均体力
参考に20~24歳の日本人の平均体力をまとめました。
自分の体力が平均以上なのか以下なのか把握しておきましょう。
データは政府統計e-statの「体力・運動調査令和4年度速報」から抜粋しています。
カッコ内は女性のデータです。
- 握力 :44.8kg(27.35kg)
- 上体起こし:28.63回(21.19回)
- 長座体前屈:44.19㎝(45.11㎝)
- 反復横とび:55.08点(45.97点)
- 立ち幅とび:224.20㎝(167.21㎝)
- 20mシャトルラン:70.25回(36.44回)
♦福岡市消防局が公表している体力の目安
福岡市消防局の採用受験案内には、体力試験の内容及び、必要な体力の目安が掲載されています。
*握力:握力計で左右の握力を測定
- 男:38kg(左右の平均)
- 女:23kg(左右の平均)
*上体起こし:仰向けの姿勢から前方への上体起こし(30秒間)
- 男:24回
- 女:17回
*長座体前屈:両足をそろえ,膝を伸ばして座った姿勢からの前屈
- 男:38㎝
- 女:38㎝
*反復横とび:中央のラインから左右のラインへのサイドステップ(20秒間)※それぞれのラインを通過するごとに1点
- 男:47点
- 女:39点
*20mシャトルラン:往復持久走
- 男:62回
- 女:32回
*立ち幅とび:助走なしで両足同時に踏み切る前方への幅とび
- 男:192㎝
- 女:141㎝
この目安を見ると、日本人の平均体力より低い数値であることが分かります。
もしかすると、「この最低限の基準を複数の種目でクリアできなければ足切り」などの選考基準があるかもしれません。
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6.まとめ
消防の体力試験では5~7種目程度実施されることが多いです。
自分が受験する消防本部で、実施される種目は必ず把握しておきましょう。
私自身、特別体力に自信がある方ではありませんでしたが、体力試験で点数を取るための練習を行うことで、内定を勝ち取ることができました。
ちなみに高校、大学で部活はやっていません。
今後、種目で点数を取るためのコツなどを別の記事で紹介します。
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