今回は公務員試験の専門科目である国際関係について。
国際関係を勉強しようか捨てようか迷っている人、もしくはどうやって勉強すればいいか分からない人、そういった方に向けて難易度や勉強方法などを紹介します。
ここで紹介している国際関係の出題分野やテーマは、『新スーパー過去問ゼミ』や『早わかりブック』など複数の書籍を基に紹介しています。
【この記事を書いた人】
・政令市の消防士と行政職、町役場を経験
・公務員試験は独学・予備校両方を経験
・YouTube ⇒ ハチサン公務員
★目次
- 国際関係を捨てるか戦うか
- 国際関係はこんな科目
- 科目の難易度
- 各試験ごとの出題数と重要度
- 地方上級(関東型)と国家総合職では重要
- 国際関係を捨てずに戦う場合
- 頻出分野
- 各試験の頻出テーマと出やすい人物
- 勉強方法と順番
- まとめ
1.国際関係を捨てるか戦うか
♦国際関係はこんな科目
国際関係は他の専門科目に比べるとマイナーな科目のため、どんな科目なのかよく分からない人も多いかもしれません。
ただ、ほとんどの人が初めて勉強する民法や行政法などに比べ、実は国際関係の方が内容には馴染みがあります。
国際関係では、世界の経済、政治、歴史、情勢などが出題されます。
そのため、高校までの基礎知識が活かせたり、公務員試験の「政治」「経済」「世界史」「時事」で学んだ知識をそのまま流用することが可能です。
■実際の過去問
以下は令和5年度国家一般職(大卒・行政)採用試験で、実際に出題された過去問です。
【問題】国際政治史における戦争と和平の歴史に関する次の記述のうち、最も妥当なのはどれか。
- 欧州で長く続いたスペイン王位継承戦争を終結させた17世紀のウェストファリア講話は、紛争当事者が一堂に会して和平合意を締結したものであった。その後の 欧州ではドイツ帝国の権威が低下し、大国が主導する勢力均衡の政治体制が形成されていった。
- ナポレオン戦争が終結すると、戦争に関与した大国はウィーンに集まり、戦争違法化の原理に基づく戦後の欧州の秩序について話し合った。ウィーン会議後には、大国・小国が一堂に会する協議の定期化なども行われ、「ヨーロッパの協調」と呼ばれた。
- 第1次世界対戦後の秩序は1919年に講和条約が調印された場所から「ヴェルサイユ体制」と呼ばれる。敗戦国の帝国は再建され、欧州において新しい国家は認められなかった。翌年に集団安全保障を反映した。不戦条約体制を確立し、国家の政策の手段としての戦争の放棄を進めた。
- 第二次世界大戦後には、敗戦国のドイツや日本 を交えた包括的な和平合意を結ぶ会議がサンフランシスコで開催され、国際連盟に代わり国際連合が設立された。大国の離反を防ぐため、安全保障理事会を構成する常任理事国に、総会の決定に対する拒否権が与えられた。
- 1989年に東欧革命が起こり、ベルリンの壁の崩壊後、G. H. W. ブッシュとM.ゴルバチョフはマルタ島で会談し、冷戦の集結を宣言した。その後、東西ドイツの統一が果たされた 一方で、ワルシャワ条約機構とソ連は解体した。
正解 5
どうでしょうか。
選択肢の中に出てくる国際連合やワルシャワ条約機構、ウェストファリア条約などは他の科目でも勉強しますよね。
答えが分からなかったとしても、何となく聞いたことがある人名や用語は問題で結構出てきます。
■出題される6分野
国際関係で出題される分野は、大きく6つに分けることができ、それぞれ他の科目と親和性があります。
1【国際機構】
国際連合、ASEAN、NATOなど国際機関について問われます。
主に重なる科目:教養政治
2【外交史】
キューバ危機など世界の外交や、日韓基本条約など日本の外交について出題されます。
主に重なる科目:世界史、日本史
3【安全保障】
中東戦争や核軍縮など、これまでの世界の紛争に関する問題が出されます。
主に重なる科目:世界史
4【国際関係理論】
国際関係について、より学問的な問題が出題されます。
学者の名前や〇〇主義など、馴染みのない言葉が多く出題されるため、ほかの科目とはあまり親和性がありません。
国家総合職の問題では英文も多く出題されます。
暗記することが多いため、面倒くさいテーマです。
5【国際経済】
GATTやWTOなど世界経済・貿易に関することが問われます。
主に重なる科目:教養経済
6【国際社会】
近年の国際情勢全般に関する問題が出されます。
主に重なる科目:時事
このように他の科目とも関連性が高いため、完全なゼロ知識の科目よりは、取り組みやすい科目と言えます。
逆を言えば、ほかの科目を勉強していれば、ある程度知識があるため、改めて国際関係は勉強しないという選択もできます。
♦科目の難易度
■ほかの科目と親和性が高い
国際関係は、暗記科目で範囲が広いため、難易度が高いという人もいますが、個人的には他の科目と比べて特に難しいという印象はありません。
平均的な難易度です。
ほかの暗記科目、たとえば行政学と比べても、特段に暗記する量が膨大という訳でもありません。
民法や行政法の方がよっぽど難易度が高いです。
もちろん、国家総合職で出題される国際関係は、ほかの試験の国際関係に比べると若干が難易度が高くなります。
ただ、国家総合職の問題は、全体的に難易度は高いので、国際関係だけに限って難しいということではありません。
また、これまで述べてきたように、国際関係はいくつかの科目と親和性が高い科目です。
世界史、日本史、時事、経済、政治あたりを得意もしくは好きな科目としてる人にとっては、むしろ戦いやすい科目です。
■英文での出題
国家一般職(大卒)の採用試験では例年、5問中1問、英文の問題が出題されています。
例えば、条約や安保理決議、首相の演説として妥当な英文を選ぶ問題など。
英文問題は、国際関係の知識及び、英語を理解する能力も必要なため難易度は上がります。
ただ、難しい単語もありますが、国際関係の知識があれば、選択肢から取捨選択可能な問題も多いです。
また、文中のキーワードとなる単語を理解すれば、全体の意味が分からなくても、何とかなる問題もあります。
♦各試験ごとの出題数と重要度
国際関係を捨てるかどうかの判断基準として、一番大事なのは国際関係の出題ウェイト。
以下が各試験における、国際関係の出題数です。
これを見ると全般的に、国際関係の出題数は少ないことが分かります。
国家総合職(政治・国際区分)と市役所試験を除いては「出題がない・出題数が少ない・選択して解答ができる」の3パターンなので、基本的に重要度は高くありません。
よって、基本的に捨て科目にすることは可能です。
♦市役所試験と国家総合職では重要
■市役所A日程、B・C日程の必須タイプはやや重要
これまで各種の市役所試験では国際関係の出題数はそれほど多くなく、重要ではありませんでした。
しかし、令和4年度からA日程の市役所やB・C日程の必須タイプの市役所試験では、40問中4問も国際関係が出題されるようになっています。
政治学と行政学は2問、財政学と社会政策は3問の出題に留まるため、これらの科目より重要度は高まります。
決して捨て科目にしてはいけません。
経済原論、行政法、民法、憲法に次ぐ重要度です。
■国家総合職(政治・国際区分)は最重要
国家総合職(政治・国際区分)では、政治と並んで国際関係が核となる科目です。
必須問題が25問、選択問題が15問の計40問。
- 必須問題:25問
・政治学 :10問
・国際関係:10問
・憲法 :5問
政治学と国際関係は絶対に落とせません。
重点的に勉強しましょう。
【関連記事】
⇒【専門試験の捨て科目】各公務員試験の捨てNG科目・捨てOK科目
2.国際関係を捨てずに戦う場合
♦頻出分野
各試験の分野別の出題頻度です。
◎:かなり出題される。〇:割と出題される。△:出題される。×:ほとんど出題されない。
国家総合職では、国際関係理論に関する問題がかなりの頻度で出題されています。
国家総合職と国家一般職以外の試験では、出題分野に大きな偏りはありません。
C日程市役所ではバランスよく出題されています。
♦各試験の頻出テーマと出やすい人物
上記の6分野をさらに細かく分けたテーマで、各試験の頻出テーマを紹介します。
- 国家総合職:国際関係理論
- 国家一般職:国際関係史
- 地方上級(全国型): 頻出なし
- 地方上級(関東型): 頻出なし
- 地方上級(中部・北陸型): 頻出なし
- 市役所B・C日程(必須タイプ):頻出なし
■国家総合職:国際関係理論
国際関係理論分野の中の「国際関係理論」が最頻出テーマです。
以下の3人はよく出題されるので覚えておきましょう。
◎ナイ(アメリカの国際政治学者:じいちゃんだけど多分若いころイケメン)・・・国際政治学者のコヘインと共に、国や企業、NGO等はお互いに依存しあっているという「相互依存論」を展開し、それにより軍事力の有効性の低下を主張しています。
そして、外交においては、国の文化や価値観などの「ソフトパワー」を重要視しました。
→ 軍事力などハードよりもソフトを!
◎モーゲンソー(アメリカ国籍国際政治学者:眉毛が凛々しい)・・・モーゲンソーは、国際政治を国益(自己利益)ための権力闘争と考え、古典的現実主義を確立。
また、「ベトナム戦争は、アメリカに国益をもたらしていない」と戦争の継続を批判しました。
→ ベトナム戦争は意味なし!
◎ウォルツ(アメリカの国際政治学者:メガネ)・・・ウォルツは、戦争の原因は人や国家よりも「国際システム」によって起こると唱えています。
また、複数に力が分散する「多極システム」よりも利己的な行動を抑制しがちな「二極システム」の方が安定すると考えました。
→ アテネとスパルタ、アメリカとソ連みたいな二極!
■国家一般職:国際関係史
外交史分野の「国際関係史」がよく出題されています。
アメリカのトルーマン、ケネディ、ニクソン、ロシアのゴルバチョフあたりがよく問題に登場します。
◎トルーマン(33代大統領:1945~1953)・・・ソ連の力を抑える封じ込め政策を実施したアメリカ大統領です。
また、核兵器を中国に落とすことを主張した、マッカーサーを解任した人物でもあります。
◎ケネディ(35代大統領:1961~1963)・・・キューバ危機の頃のアメリカ大統領で、キューバを海上封鎖しました。
首脳同士が直接通話できるホットラインも設置しています。
◎ニクソン(37代大統領:1969~1974)・・・ベトナム戦争で、アメリカ軍を撤退させた大統領です。
1971年、金とドルの交換停止、アメリカ大統領が中国を訪問したことなど、世界の秩序を変革させるこの二つの出来事を合わせて、ニクソンショックと呼びます。
◎ゴルバチョフ(ソ連最後の指導者:1985~1991)・・・冷戦終結の立役者となったソ連の書記長で、改革政策ペレストロイカを実践しました。
1989年、東欧諸国の体制改革が進む中、軍事介入を行うこともありませんでした。
■地方上級(全国型):頻出なし
地方上級(全国型)では頻出テーマはありません。
逆に国家間や民族間の「国際紛争」と「各国情勢」については、ほとんど出題されません。
■地方上級(関東型):頻出なし
地方上級(関東型)についても頻出テーマはありません。
「地域機構」と時事的問題が多い「各国情勢」については、これまでにほとんど出題されていません。
■地方上級(中部・北陸型):頻出なし
地方上級(中部・北陸型)も出題テーマに偏りはありません。
国家総合職では最頻出テーマの「国際関係理論」ですが、ここではほとんど出題されていません。
■市役所B・C日程(必須タイプ):頻出なし
市役所B・C日程(必須タイプ)も偏って出題されるテーマはないです。
ASEAN、EUなどの「地域機構」についてはあまり出題されません。
♦勉強する順番
■国際関係を勉強する順番
国際関係を捨てずに勉強する場合で、出題数が少なく重要度Cの試験を受ける時は、国際関係の勉強は後回しで構いません。
公務員試験は範囲が広く、高確率で勉強時間が足りなくなるため、まずは重要度の高い科目から攻めていくべきです。
もしも勉強時間が足りずに、国際関係の勉強まで行き着かなかった場合でも、国際関係と関連のある政治、経済、世界史、時事などを勉強していれば、ワンチャン点数が取れる場合もあります。
なので重要科目の勉強がある程度はかどった後に、国際関係の勉強に取り掛かりましょう。
逆に、国際関係の勉強から先に始めて、重要度の高い科目の勉強に行き着くまでに試験日を迎えてしまったら最悪です。
♦勉強方法
勉強は他の科目と同様に、何度も過去問を解くことが基本です。
■新スーパー過去問ゼミ
具体的には『公務員試験 新スーパー過去問ゼミ 国際関係』を使用することをオススメします。
分野及びテーマごとに過去問がまとめてあり、掲載されている過去問の数も100問を超えています。
各テーマごとにポイントがまとめれらていますが、最初は過去問を解いても全く分からないと思います。
それでも大丈夫です。
何度も問題を解いて、問題の解説を読むことで少しずつ理解できるようになっていきます。
問題を解く時間が足りない人は、難易度の高いレベル3(***)の問題を飛ばしましょう。
付け焼刃で難易度の高い問題に取り組んでも、本番で解けるとは限りません。
■過去問500
もう一つのオススメは『専門試験 過去問500』。
『新スーパー過去問ゼミ』を解いてもさらに時間ある方は、各試験区分の『過去問500』でさらに問題数をこなしましょう。
各試験の様々な科目の過去問が、1冊にまとまっているため、1つ1つの問題数は多くありませんが、汎用性が高い問題集です。
B5サイズで分厚いですが、シンプルな構成で使いやすいです。
各試験種ごとに出版されています。
『新スーパー過去問ゼミ』と『過去問500』は、どちらも公務員試験において、超メジャーな過去問題集なので、買って間違いはないです。
■速攻の時事
国際関係の分野で「国際社会」分野のみは時事的要素が強いです。
そのため、教養時事問題の勉強を兼ねて、『公務員試験 速攻の時事』で勉強をすることをオススメします。
『速攻の時事』は時事問題の対策本として最も人気のある参考書。
基本的にインプット用参考書ですが、アウトプットができるトレーニング編もあります。
【関連記事】
⇒『速攻の時事』の評価は?買うタイミングについても解説します
■半捨て
「国際関係を捨てようと思っている人」と「国際関係をきっちり勉強しようと思っている人」の中間的な戦略が「半捨て」です。
国際関係の各出題テーマは、それぞれ連動しているわけではないため、必ずしも全範囲を勉強する必要はありません。
したがって国際関係の頻出テーマのみ勉強して、出題頻度が少ないテーマは勉強しないという方法もありです。
これが部分的に捨てるという戦略「半捨て」です。
3.まとめ
国際関係について紹介しました。
私が志望していたところの試験では、国際関係の重要度は高くなかったので、捨ててもよかったのですが、好きな科目でもあったので、後回しにして「半捨て」で重要な部分だけ集中して勉強しました。
みなさんも単純に捨てる・捨てないと決めるのではなく、志望先の傾向なども考えて、戦略的に勉強に取り組みましょう。